• 加賀美健 @kenkagami

    1974年東京都生まれ。スタイリストのアシスタントを経て、サンフランシスコへ渡る。帰国後、作品を発表し始める。社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的発想に変換し、彫刻、絵画、ドローイング、映像、パフォーマンスなど、メディアを横断して発表。国内外を問わず多くの美術展に参加するなど、幅広く活動をしている。

  • 吉田怜香 @4848r

    1987年兵庫県生まれ。オリジナルブランド「TODAYFUL」デザイナー兼ライフスタイルショップ「Life’s」のディレクターを務める。ファッションのみならず、洗練されたライフスタイルやセンスが多くの女性から支持を集めている。オンラインコミュニティ 「Ours.」も話題。

"今日も一日充ちっていく"ために、2人が大切にしていること。

現代美術作家として、さまざまな手法で独自のアートを表現する加賀美健さん。そんな彼とTODAYFULとのコラボレーション・コレクションが、桜の花が咲き始める3月26日に発売開始になります。今回の対談では、コラボレーションのきっかけや背景、"今日も一日充ちっていきましょう"という言葉に込めた想い、そしてものづくりの裏側にある考え方や日々の心がけについて語り合いました。

< コラボレーションが実現した経緯と、最初の打ち合わせ >

ー 加賀美健さんとTODAYFULのコラボレーション、まずはどういうきっかけで実現したのか教えてください。

吉田:そもそもは、代官山の鎗ヶ崎交差点にある屋外広告を、TODAYFULがしばらく借りているんですけど、そこに何を掲載しようかなって考えているとき、加賀美さんの字がいいなって思いついたんです。先日まではTODAYFULのルックのビジュアルだったので、同じように写真が続いてもつまらないから次は意外性があって、お客さまがかわいいな、おもしろいなって思ってくれるものにしたくて。それで加賀美さんにオファーをさせてもらいました。

ー 元々加賀美さんの作品をご存知だったんですか?

吉田:何年も前に表参道のユトレヒトっていう書店で加賀美さんの作品を知りました。それからは普段LINEスタンプを愛用していたり、絵本の「くっつけてみよう」を自分でも買って、友達の出産祝いで贈ったりもしていて、独特のゆるい世界観のファンの1人でした。

加賀美:そうなんですか?ありがとうございます。

ー 加賀美さんはこのお話が来たときどう感じましたか?

加賀美:吉田さん、たくさんフォロワーいて、すごいなあって(笑)

一同:(笑)

加賀美:ウィメンズのアパレルブランドのことってぜんぜん知らなくて。友達に聞いたら、TODAYFULすごい人気だよって教えてくれました。鎗ヶ崎にお店があることは僕も知ってましたよ。自転車でたまに通っていたから。

吉田:ウィメンズだけのブランドとコラボレーションしたことは?

加賀美:たぶんないと思いますね。こういう感じでやらせてもらうのは初めてです。

吉田:やった〜!嬉しい。

加賀美:最初に連絡をもらった時は、何か僕にできることあるのかな〜って思ってました(笑)。中目黒で打ち合わせしましたね。

吉田:中目のカフェで待ち合わせしてたんだけど、お店の近くで迷っている男の人がいて、「あ、絶対加賀美さんだ」って見ていたら、ふと壁の写真を撮りだして(笑)。加賀美さんっぽ!とか思って。

加賀美:早くついちゃって、壁の落書きかなんかがちょっと気になったんです。ああいうのって意外と見られてるんですよね。前、潰れた空き缶とか拾ってたら、友人に写真撮られていて。吉田さんはあんなにフォロワーいるから、缶とか拾ってるところ見られたら大変かもしれないですね(笑)。

吉田:よっぽど気になったら拾うかも(笑)。でも、大人になってもそうやって身の回りのものに新鮮な興味を持ち続けられるってすごくいいですよね。

加賀美:そういえば、吉田さんに歳を聞かれて48歳って答えたら、「おっさんじゃないですか!」って言われましたね。それはなんだか面白かった(笑)。ノリのいい人なんだなって。

吉田:いや、そんな直接は言ってないはず!(笑)。加賀美さんって若く見えるっていうか、年齢って概念があんまりないけど、思ったより年上なんだなって。肌つるつるだし。

加賀美:今日は対談があるから、乳液つけていきなって奥さんに言われてつけてきたんですよ。普段はベタベタするから嫌なんだけど。

吉田:きれいに写るといいですね(笑)。

加賀美:やめてよ(笑)。

< 「今日も一日充ちっていきましょう」という言葉に込めた思い >

ー 「今日も一日充ちっていきましょう」という言葉はどのように決まりましたか?

吉田:TODAYFULは、シンプルに言うと「充実した1日を」っていうコンセプトで。それを元に言葉を考えてもらいたいって相談しました。

加賀美:「今日が充ちる」って言葉が好きだって吉田さんが最初に言っていて、それをすごく覚えていたんですよ。「今日が充ちる」って、あまり使わない言葉だし、いいなって。

吉田:「今日も一日充ちっていきましょう」のステッカーをスマホのケースに入れているんだけど、毎朝いい気分になります。ちょっと気分が上がる。

加賀美:昔ずっと野球をやっていたんだけど、声出していこうぜ〜みたいな、その感じがちょっと出てきたのかもしれない。

吉田:わかる。その感じ。毎日掛け声をかけてもらってる気分で、がんばろって思える。

ー 小さい「っ」が入っているのも印象的でした。

加賀美:日本語って、その小さい「っ」があるかないかで、全然変わるでしょ。時代背景によって言葉の使い方も変わるし、制限もあるし、やるからには加賀美健が考えたんだなっていう感じも欲しいし、TODAYFULらしさも大切だし、そこでちっちゃい「っ」が効いたんだと思う。

吉田:めっちゃ効いてます。

加賀美:TODAYFULのホームページを見ながら考えたんですよ。スタッフのスナップとか見て、みんなかわいいなって。ちっちゃい「っ」はそこから来てるかも。ごついメンズのお店だったら、ちょっと変わってたかもしれませんね。「充ちっちゃいなよ」とかだと違いますし。

吉田:確かにそれはなんか嫌かも(笑)。でも、本当にたくさんの候補を書いてきてくれたんですよ。

加賀美:いろいろな言葉を書きましたね。女性にとってのあるあるフレーズっていうお題もあって、カフェで耳に入ってきた他人の話とか、友人の話とかを思い出しながら書きました。

吉田:どれもめちゃくちゃよくないですか?「すごくうちらだ」って思って、選ぶの本当に楽しかったし同時に捨てがたくて。「いいよね〜そんな肩出せて〜」とか、こんなにわたしたちの気持ちわかるんだ、おっさんなのにって思いました(笑)。

一同:(笑)

加賀美:僕は普段人の会話をすごく聞いてるんですよ。カフェの隣の席とか、奥さんの会話とか。頭に残るじゃない、面白い話って。今日の話もどこかで何かになるのかもしれない。

ーああ、そうなんですね。"やっぱこの歳になったら本物を身につけたいよね"とかいいですね(笑)

加賀美:本物って何なんだ?っていうね。いっぱいある中から、最終的にいいのを選びましたね。

吉田:「今日も一日充ちっていきましょう」と、「やることいっぱい」と、「メイクしてないよー スッピンだよー」の三つ。あと犬のイラストも何パターンかある中から、これにしました。

ー どんな商品になっていくんですか?

吉田:子ども用のTシャツと、トートバッグと、ステッカーと、あとマグカップです。「今日も一日充ちっていきましょう」は、屋外広告にも掲載する予定で、一番中心にある言葉ってイメージ。「やることいっぱい」は、大人もだけど、逆に一歳半の娘が着てたらかわいいなって思って選びました。

吉田:マグカップは子どもも使えるようバンブー素材で、割れないものに。トートバッグのボディは1度洗いをかけて、わざとキナリの綿カスをとっています。大人が持ったとき、ほっこりしすぎずスタイリッシュな印象になるように。文字のおもしろさを日常に取り入れる上でどういう形にするのが一番いいのかな、使いやすいかなって考えました。今回、加賀美さんがたくさんの言葉を提案してくれて、少し頭の中をのぞかせてもらえたことが本当に楽しかったんですよね。そこに加賀美さんと取り組む価値があるんだなって。

加賀美:くだらないことしか書いてないんですけどね、嬉しいです。

< 普通に変わらずに充ちっていくために >

ー お二人にとって、「充ちっていく」ために必要なことは?

加賀美:なんだろう。わからないけど…でも、奥さんに「ありがとう」って絶対言うようにしています。18歳から付き合ってそのまま結婚したんですよ。もう30年一緒にいて、ありがとうって言葉は、言いますね。親しき仲にも礼儀ありみたいな。なんていうか、家族が仲良いと自動的に充ちっていきますよね。喧嘩とかしちゃったりしても、ちゃんと謝ったり。大体お母さんの方が正しいですね。男は全然ダメ。

吉田:え〜〜。すてき。

加賀美:おおげさなことじゃなくて、ありがとうとかそういうことを普通に言うっていうことが大切だと思ってます。

ー 怜香さんはいかがですか?

吉田:加賀美さんと初めの打ち合わせの時も話したんだけど、そもそも「充実」「充ちる」という言葉がずっと好きで。でも、いいことだけ、楽しいや嬉しいだけが充ちるってことじゃなくて。仕事で落ち込んだり、「悔しかった〜」とか、色々あったとしても「今日も生きたな〜」って実感があったら、それが充ちるってことだと思う。私の中では、疲れたけど頑張った、よく生きたな、みたいなことが感じられたら、ちょっと充ちってたな〜って思うかな。人間ぽく生きて、日々新しい自分を見つけられたらいいな。そういう感じです。

ー ポジティブなだけではない、人間のいろんな側面をちゃんと大事にしていくと。

吉田:ずーっと素敵ライフでい続けるのって、人間ぽくないしね。加賀美さんの今回の取り組みだって、最初はすごく緊張したし、変なこと言って破談になったらどうしよう!とか不安だったり。でも実際に会ってほっとして、いい形になりそうだなーって楽しみになって。そういうことの繰り返しが生きてる感じなのかなと思います。

加賀美:眠る前に1日を思い返したりするのが大切ですね。あんまりそんなこと考えられないじゃないですか。「は〜疲れた〜」とか思いながら寝ちゃうばっかりで(笑)。でも、そういう時間が大事だなって思いました。

ー お二人の話を聞いていると、なんていうか、"いいやつ"っていう感覚がしっくりくるんですよね。

加賀美:そうですか?でも、たまに悪口とか言いますよ。悪口言わない人とかたまにいて、すごいなって思います。僕は昔から変わらないだけって気がするんですよね。大人になるステップで、色々変わっちゃったりするのが一般的なのかなって思うけど、ただ変わらないままでいるっていう。

吉田:私も「全然変わらないね」って地元の友達とかに言われるタイプなので、わかります。自分の生活とか環境が変わっても、自分自身は変わらないし普通なまま。加賀美さんもそういう普通さ、人間ぽさがある人なんだなって思いますよ。

加賀美:自分ではわからないけど、わかってやってても変ですしね(笑)。わからないまま、変わらないままでいるのがいいのかもしれません。

吉田:それぞれの人の捉え方で、普通に変わらずに、充ちっていきたいですね!